読者の間で今なお語り草となっているのが、作中における阿比留鋭三郎の退場劇です。歴史物としての枠組みを保ちつつも、極限のサバイバルアクションへと昇華されたその最期は、まさに圧巻の一言に尽きます。
壬生浪士組の主導権を巡る内部の歪みが限界に達した瞬間、阿比留は容赦のない粛清と暴力の濁流に呑み込まれました。芹沢鴨の絶対的な暴力性と、水面下で組織の掌握を狙う土方歳三たちの冷徹な策略が交錯するなか、阿比留は自らの力不足と組織の非情さを思い知らされる形で命を奪われることになります。
戦場さながらの緊迫感の中で描かれた阿比留の死は、読者に「この漫画では誰もが命を落とす危険と隣り合わせである」という絶対的な緊張感を植え付けました。初期の退場劇でありながら、その凄惨さと潔い散り様は、作品が掲げる「鎮魂歌(レクイエム)」のテーマを象徴する重要なマイルストーンとなっています。