激辛成分であるカプサイシンは、適量であれば血行促進や食欲増進をもたらしますが、過剰摂取は明確な劇物として生体に作用します。医学的・毒性学的な観点からカプサイシン致死量症状と身体の反応プロセスを紐解きます。
薬理実験データによると、マウスにおけるカプサイシンの経口半数致死量(LD50)は体重1kgあたりおよそ47mg〜118mgとされています。これを体重60kgの成人人間に単純換算した場合、キャロライナリーパー致死量は約3g〜6gの純粋なカプサイシンを一括摂取することに相当します。生のキャロライナ・リーパーに換算すると一度に約10個〜30個程度を一気に食べ切る計算になり、物理的な胃の容量や痛覚の防衛反応を考慮すると「純粋な毒性のみで即死する量」を口から完食することは容易ではありません。
しかし、実際の唐辛子食べ過ぎ死亡理由は、化学的致死量への到達ではなく、以下に挙げる急性ショック症状と反射的生体反応にあります。
第一に、口腔や消化管のTRPV1受容体(熱・痛覚受容体)が高濃度カプサイシンで過剰刺激されると、交感神経が暴走し、アドレナリンが血中に大量放出されます。これにより急激な血圧上昇と冠動脈の攣縮(スパズム)が起き、致死的不整脈や心筋虚血、解離性大動脈瘤のリスクが跳ね上がります。
第二に、胃粘膜への直接的な組織破壊と強烈な嘔吐反射です。激しい嘔吐によって食道粘膜が裂けるマロリー・ワイス症候群や、食道全層が破裂するブールハーフェ症候群(特発性食道破裂)を引き起こした場合、胸腔内感染や大出血により急速に生命危機へと直結します。