本作のバックボーンにあるのが、作家ビリー・レッツが1995年に発表したベストセラー原作小説『愛のゆくえ(原題:Where the Heart Is)』です。同作は全米屈指のインフルエンサーであるオプラ・ウィンフリーが自身の「ブッククラブ」で大々的に推薦したことで社会現象となり、映画化への道を拓きました。
原作小説は、映画版以上にアメリカ南部・中西部に根深く残る貧困層(いわゆるプア・ホワイト)の苛酷な生態系を容赦なく描いています。映画ではテンポ重視でコミカルに処理されたエピソードも、原作では児童虐待の生々しい描写や、宗教的戒律と世俗の生々しい葛藤が克明に綴られていました。映画版における最大の美点は、脚本チーム(ローウェル・ガンツ&ババルー・マンデル)の手腕によって、その過酷な原色を保ちつつも、観客が明日への希望を抱ける上質なヒューマンドラマへと見事に翻案・再構築した点にあります。
また、物語に唯一無二のリアリティを与えているのが、徹底した現地撮影によるロケ地撮影場所の空気感です。設定上の舞台はオクラホマ州セコイアですが、実際の撮影の多くはテキサス州オースティン近郊の町(ロックハート、テイラー)で行われました。劇中に登場するウォルマートの広大なロードサイド感、乾燥した埃っぽい風、そしてフォーニーが勤務する重厚な図書館(テキサス州ウェーコのベイラー大学で撮影)の対比が、閉塞感漂う田舎町の中で生きる人々の孤独と温もりを雄弁に物語っています。