千住真理子の音楽を語る上で欠かすことができないのが、300年の眠りから覚めた名器「デュランティ(1714年製ストラディヴァリウス)」の存在である。2002年に彼女のもとへとやってきたこの奇跡のヴァイオリンは、約300年間もの間、誰にも弾かれることなく王家の金庫などに封印されていた幻の楽器だった。
出会いから20年以上が経過した現在、デュランティは千住の呼吸や血流と完全にシンクロするかのように、以前にも増して深みのある倍音を響かせている。名器に命を吹き込み、自分の声として歌わせるまでのプロセスは、まさに命がけの対話だった。彼女の手によって目覚めたデュランティは、いまや体の一部であり、かけがえのない人生の伴侶となっている。