では、「身体で惹かれる」感覚の正体とは一体何なのか。近年の研究で急速に注目を集めているのが、HLA遺伝子(主要組織適合遺伝子複合体)と嗅覚の関係性だ。
人間は自分とは異なるHLA遺伝子を持つ異性の匂いを「心地よい」と感じる性質がある。これは、異なる免疫システムを掛け合わせることで、より多様な病原体に対抗できる子孫を残そうとする生物学的適応戦略だ。言語化できない「なんだか好き」「落ち着く」という感覚は、遺伝子レベルでの適合度を嗅覚が瞬時に判定した結果に他ならない。
「身体の奥が反応する感覚を単なる幻想と片付けるのは早計です」。予防医学の研究者は指摘する。「皮膚感覚、匂い、呼吸の同期。人間の身体は、意識が知覚するよりも遥かに膨大な生体情報を毎秒処理しています。直感とは、脳が意識にのぼらせる前に下した超高速の演算結果なのです」。