ネット上の考察コミュニティで長年語られるのが、ポニョの死神説にまつわる都市伝説です。ポニョの本名が北欧神話の戦乙女に由来する「ブリュンヒルデ」であることから、死者を天上の館へと導く役割を重ね合わせる見解が存在します。
街が水没した直後、船に乗って避難する住人たちが悲壮感を一切見せず、宗介やポニョに向かって穏やかに手を振る場面があります。この非現実的なまでの多幸感に対し、「住人たちは全員溺死しており、成仏する途中の情景なのではないか」という恐怖の解釈が生まれました。
しかし、宮崎駿監督の公式見解を追っていくと、単なるホラーめいた都市伝説とは一線を画す哲学が見えてきます。監督は製作時のインタビューなどで「死後の世界」という言葉を直接肯定はしないものの、「生と死が同じ場所にあるような世界を描きたかった」「神経症や不安を抱える現代において、すべてが水に沈んで洗い流される解放感」について言及しています。死を恐ろしいものとして忌避するのではなく、自然の循環の一部として肯定的に捉える死生観が、独特の浮遊感を生み出しているのです。