九回裏、土壇場まで追い詰められた攻撃陣。敗色濃厚のムードを断ち切ったのは、代打の一振りと主将の走塁だった。ベンチからの「焦るな、球を絞れ」という指示を愚直に守り、相手エースの決め球を見極めた姿勢が実を結んだ形だ。
相手ピッチャーはそれまで、キレのあるスライダーと150キロ台の直球で打者を圧倒していた。しかし、極限状態の中でわずかに甘く入った1球を見逃さなかった。一塁走者が三塁を蹴り、迷わず本塁へヘッドスライディングを決めた瞬間、アルプススタンドからは怒号のような歓声が巻き起こった。まさに甲子園に潜む「魔物」と「神様」が交錯した瞬間だった。