火野正平の晩年の代表作となったのが、NHKの自転車旅番組『にっぽん縦断 こころ旅』だ。14年間にわたり相棒のチャリオ(自転車)と共に全国を駆け抜けた彼のバイタリティは、日本中に感動を与えた。しかし、70歳を超えての過酷なロケは、満身創痍の身体には酷な挑戦だったはずだ。
この挑戦を影で支えたのが、やはりパートナーの存在だった。ロケに出発する前、彼女は必ず彼の体調を細かくチェックし、特製のサプリメントや常備薬を持たせた。「生きて帰ってくること」。それが二人の暗黙の約束だった。彼が旅先で見せる少年のような笑顔の裏には、帰るべき場所を守り続ける女性の絶対的な安心感があったのだ。