味の決め手となるソースベースの設計思想にも、両者の明確な違いが現れています。
ビーフシチューの根底にあるのは、フォンドボーや赤ワインをベースにした本格的なデミグラスソースの重厚なコクと苦味・旨味です。肉そのものを美味しく食べるための煮込み料理として発展してきたため、ソース自体がどっしりとした重厚感を持ちます。
対するハヤシライスは、デミグラスの風味を取り入れつつも、トマトペーストやトマトケチャップのフルーティーな酸味と甘みが前面に出るように仕立てられています。これは「白いご飯にかけて食べる」という大前提があるためです。米のデンプン質の甘みと絡んだときに最も心地よく感じられるよう、酸味と玉ねぎの甘みを立たせた軽やかなソース設計になっています。