事件の発端は2009年8月、埼玉県富士見市の月極駐車場に止められたレンタカー内で、当時41歳の男性会社員の遺体が発見されたことでした。車内には練炭と七輪が残されており、当初は自殺と見られていましたが、男性が婚活サイトで知り合った女性に約450万円を振り込んでいた事実が浮上します。その相手こそが、当時34歳の木嶋佳苗でした。
警察の捜査が進むにつれ、彼女の周辺で同様の不審死を遂げた男性が相次いでいたことが判明します。2009年1月に東京都青梅市の53歳男性、同年5月に千葉県野田市の80歳男性が自宅で死亡しており、いずれも体内から睡眠導入剤の成分が検出され、死亡直前に多額の現金が木嶋の口座に移動していました。詐取した総額は1億円以上に達し、贅沢な暮らしや高級外車の購入、料理教室の学費へと消えていました。
メディアは彼女を「平成の毒婦」と大々的に報じました。しかし、単なる金銭目当ての詐欺殺人にとどまらず、被害者たちがなぜこれほどまでに深く彼女にのめり込み、疑うことなく巨額の資産を差し出したのかという木嶋佳苗の毒婦の真相を巡っては、裁判を通じて明らかになった特異な人間関係のあり方が大きな議論を呼びました。