昭和20年の敗戦は、一族に最大の試練をもたらした。連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による財閥解体指令である。三井本社は強制的に解散させられ、一族が保有していた株式は公開市場へ放出。華麗なる一族の直接支配は終焉を迎えたかに見えた。
だが、その精神と知恵は散逸しなかった。戦後の混乱期を経て設立された公益財団法人三井文庫には、江戸期からの膨大な商業帳簿や往復書簡、経営日誌が奇跡的に保存されている。近年、国内外の研究者が財閥解体アーカイブの機密資料と照合しながら文庫の所蔵史料を再検証した結果、GHQの過酷な査問に対していかに論理的かつ粘り強く一族のアイデンティティと文化財を守り抜いたかが明らかになり、歴史家たちを唸らせている。