主人公・アキコ(小林聡美)が母の遺した食堂を改装し、潔い決断とともにオープンさせた小さなサンドイッチとスープの店。白を基調としたシンプルな内装と、大きなガラス窓から差し込む自然光が印象的だったあの空間は、世田谷区松原に実在したカフェ兼ギャラリースペースがメインの舞台として使用された。
ロケ地となった物件は、撮影当時から独自のセンスで愛されていた場所だ。ドラマ放映後は多くのファンが訪れる象徴的なスポットとなったが、街の移り変わりとともに営業形態の変更やリニューアルを経て、現在は当時のカフェとしての営業形態からは姿を変えている。それでも、外観の端正な佇まいや周囲の静けさには、アキコが選んだ「自分らしい暮らし」の気配が今なお色濃く残る。
現地を歩くと、ドラマの美術スタッフがいかに街の空気感と建物のポテンシャルを引き出していたかがよく分かる。派手な観光地ではない。ごく普通の住宅街の片隅に佇むその場所は、訪れる者に「自分の生活を丁寧に整えたい」と思わせる静かな説得力に満ちている。