大相撲の歴史を振り返っても、特定の国出身者がこれほど長期にわたり頂点に立ち続けた例はありません。モンゴル出身力士が他を圧倒する強さを発揮できる背景には、明確な3つの要因が存在します。
第1の要因は、伝統武道「モンゴル相撲(ブフ)」に裏打ちされた驚異的な身体操作能力です。幼少期から草相撲に親しむモンゴルでは、足腰の粘りと重心の低さが自然と体に染み付いています。土俵という限られた円形空間で行う大相撲に対し、ブフには土俵の境界線がなく、膝や肘、背中など足裏以外が地面につくまで勝負が続きます。俵に足をかけてからの驚異的な「うっちゃり」や、不利な体勢から相手を引っくり返す強烈な投げ技は、まさにブフの攻防そのものです。
第2の要因は、大草原での遊牧生活と過酷な気候が育む強靭な骨格と体幹です。幼い頃から馬を乗りこなし、マイナス30度を下回る極寒の冬を越える生活環境は、天然のフィジカルトレーニング環境そのものです。骨密度が高く、強靭なインナーマッスルと柔軟な関節可動域を併せ持つ肉体は、怪我に強い理想的な力士体型を形作ります。
第3の要因は、何よりも家族や一族の生活を背負って単身日本へ渡ってきたハングリー精神です。言葉も通じず、生活習慣も上下関係も厳しい相撲部屋に飛び込み、「負ければ後がない」という極限の覚悟で稽古に打ち込む熱量は、並大抵のものではありません。この精神力の差が、土俵際のわずか数センチの攻防で勝敗を分ける決定打となっています。