では、なぜ「食べないと縁起が悪い」「バチが当たる」とまで言われるようになったのか。その背景には、長年にわたる巧みな業界の宣伝戦略と、食品小売業界の急速な全国展開が存在する。
歴史を振り返ると、かつて関西の一部地域にあった風習に着目し、これを販路拡大の機運としたのが全国海苔貝類漁業協同組合連合会などの海苔業界団体だった。1970年代から80年代にかけて海苔の消費拡大を目的としたキャンペーンが打たれ、さらに1990年代以降、セブン&アイ・ホールディングスをはじめとする大手コンビニチェーンが「恵方巻き」の名称で全国展開を推進。これにより、一気に国民的イベントへと駆け上がった。
商業的な成功に伴い、「途中で喋らず一気に食べる」「切らずに食べる」といったユニークなルールが提示され、それがいつしか「守らなければ幸運が逃げる」「食べないと損をする」という心理的アプローチへと発展した。消費者の「乗り遅れたくない」という心理が、都市伝説的な噂を強固にしたのだ。