不死川実弥を語る上で、実弟である不死川玄弥との関係性を抜きにすることはできない。母親が鬼と化し、家族を自らの手で屠らざるを得なかったあの惨劇の夜から、兄弟の時間は歪な形で凍りついていた。
「兄貴に謝りたい」と願い、鬼を喰らってまで戦場に立ち続けた玄弥。対する実弥は、弟を冷徹に突き放し、罵倒し、鬼殺隊から追い出そうとさえした。しかし、その苛烈な拒絶の正体は、弟だけは何としても平穏な日常の中で生き延びてほしいという、あまりにも不器用で狂気じみた自己犠牲の愛だった。突き放すことでしか守れなかった兄の慟哭が明らかになった時、読者が覚えた衝撃は計り知れない。血煙と絶叫が交錯する無限城の戦いにおいて、この兄弟が辿り着く結末は、本作屈指の涙腺崩壊ポイントとして語り継がれている。