原作者である高屋奈月が『花とゆめ』(株式会社白泉社)で連載を開始した当時、少女漫画の枠組みの中でここまで重厚なトラウマと救済を描く作品は稀有だった。透というキャラクターの造形には、徹底した心理描写と緻密なプロットが張り巡らされている。
裏設定や作中考察において特筆すべきは、透の丁寧語や過剰なまでの謙遜の理由だ。かつて父の死後、親戚から「本当に本田家の子か」と疑われた際、幼い透は「父に似せるため」に父の口調である敬語を真似し始めた。つまり、彼女の柔らかな敬語は、愛する母から捨てられないための、幼き日の切実な自己防衛の鎧だったのである。こうした緻密なバックストーリーが読者の心を掴んで離さない。株式会社白泉社の誇る傑作として、世代を超えて読み継がれる理由はここにある。