温浴業界において、都市部で本物の温泉を提供することは容易ではない。多くの施設が人工温泉や循環ろ過に頼るなか、湯河原温泉や熱海温泉などの上質な源泉を毎日現地から運ぶスタイルを貫いている。このロジスティクスの凄みこそが、本物志向の利用者を惹きつけて止まない理由だ。
「お湯に入った瞬間の肌触りが全く違う」。常連客が異口同音に語るように、現地で汲み上げられたばかりの湯は、成分の濃密さと滑らかさを保ったまま都市の湯船に注がれる。わざわざ遠出することなく、箱根や湯河原の効能を全身で享受できる体験は、現代のタイムパフォーマンス重視の価値観とも見事に合致している。