栄養豊富で無害なはずの種とワタが、なぜ日本の家庭料理において「捨てるもの」として定着してしまったのでしょうか。食文化の変遷を辿ると、昭和期に洋食文化が全国へ普及した際の見栄えへの配慮や、当時の西洋料理における仕込みマニュアルがそのまま家庭科の教科書に引用されたことが主な発端です。
フレンチや洋食の古典的な下処理では、料理の見た目を均一で美しく仕上げるため、舌触りが不揃いになる種や繊維質なワタを削ぎ落とす工程が基本とされていました。この調理技法が「種は雑味であり捨てるべき部位」という固定観念を生み出し、世代を超えて受け継がれてきたのです。
農家直伝の郷土料理やプロの料理人による発信がSNSで拡散されたことで、風向きは大きく変化しました。産地では昔から「ピーマンは丸ごと直火で焼いて食べるのが最も甘くて旨い」と知られており、包丁を一切入れずに加熱することで果汁が内部に閉じ込められ、驚くほどジューシーに仕上がることが広く知れ渡るようになりました。
「今まで種を取り出すために費やしていた時間は何だったのか」「丸ごと炒めた方がピーマン特有のエグみが消えて甘くなる」といった声がSNS上でも相次いでおり、調理の常識は急速に塗り替えられています。