中山道の難所として知られた碓氷峠の頂上に佇む「しげのや」が、他にはない唯一無二の存在感を放つ最大の理由は、店舗のちょうど中央に長野県と群馬県の県境が引かれている構造にあります。
店内の床やテーブル、さらには茶屋の暖簾に至るまで赤や黄色の境界線がくっきりと示されており、右側が「信州(長野県軽井沢町)」、左側が「上州(群馬県安中市)」と分かれています。この県境は観光用の演出ではなく、保健所の営業許可や固定資産税の納税先、さらには設置されている電話機の管轄まで両県にまたがっている本物の境界です。店内の同じテーブルに向かい合って座りながら、「私は長野県、あなたは群馬県」という非日常的な体験が楽しめます。
また、店舗の真向かいには日本三大熊野の一つとされる「熊野皇大神社(長野県側)/碓氷神社・熊野神社(群馬県側)」が鎮座しています。神社本殿の中央も県境で分かれており、宮司も宗教法人も別々に存在する歴史的なパワースポットです。参拝と茶屋での休憩が一体となった峠文化を色濃く残している点こそ、時代を超えて人々を惹きつける根本的な魅力といえます。