過酷を極めたペリリュー島の戦闘において、読者が最も息を呑んだのは「主人公・田丸一等兵が生き残れるのか」という一点でした。結論から述べると、田丸は終戦を知らぬまま島内に潜伏し続けたのち、昭和22年(1947年)4月に米軍へ投降し、無事に日本本土への生還を果たします。
物語のクライマックスでは、組織的抵抗が崩壊したあとも洞窟に潜み、飢えや猜疑心に苛まれながら生き延びた「三十四会」の過酷な潜伏生活が克明に描かれました。仲間思いで心優しき青年・吉敷(よしき)をはじめとする多くの戦友が、戦闘のみならず病魔や絶望、味方同士の疑心暗鬼によって命を落としていく中、田丸は生きることへの執念と「この地で起きたすべてを記録する」という画工としての使命感を支えに命をつなぎ止めます。
古参兵として現実的な判断を下し続けた小杉らとともに帰還船に乗った田丸を待っていたのは、焼け野原から復興へと向かう祖国の姿でした。最終話において、田丸は復員後に漫画家・絵本作家としての道を歩み、南の島で散っていった名もなき若者たちの笑顔や日々の暮らしを紙の上に描き遺します。凄惨な死を美化せず、ただ「そこに生きていた人間がいた」という事実を後世に託すラストシーンは、多くの読者に深い余韻を残しました。