珈琲抽出の世界には、古くから伝わる慣習やネット上の言説に起因するいくつかの「誤解」が存在します。暮らしと珈琲の発信では、科学的なアプローチと実証実験を通じて、そうした盲点をクリアにしていく点に大きな価値があります。
よくある誤解の筆頭が、「高額なドリッパーを使えば誰でも自動的においしくなる」という思い込みです。実際には、ドリッパーごとに湯抜けの設計思想が異なるため、自分の注湯リズムや使用するグラインダーの粒度(粉の細かさ)に合っていなければ、かえって過抽出や未抽出を引き起こす原因になります。道具の価格ではなく、道具の特性と抽出レシピの適合性がすべてを左右します。
また、「ネルドリップは手入れが面倒で一般家庭には不可能」という敬遠感も散見されます。しかし、正しい保管ルール(乾燥させず水に浸して冷蔵庫に保管する、洗剤を使わず煮沸する)さえルーティン化してしまえば、ペーパーフィルターでは決して到達できない極上の質感を日常的に楽しむことができます。暮らしと珈琲は、こうしたハードルを実演によって下げる役割を果たしています。