情報空間において極めて根強く流通しているのが、「足の裏のほくろ=強運・億万長者の手相ならぬ足相」という占い・スピリチュアル言説だ。古くからの相術において、足の裏のほくろは「足下に宝を敷く」「世界中を飛び回って財を成す吉相」として扱われることがあり、ネット上でもポジティブな意味付けが拡散されている。
開運やスピリチュアルな解釈自体を全否定する必要はないが、健康管理と相術の優先順位を取り違えることは極めて危険だ。「幸運のほくろだから消えてほしくない」「縁起が良いから病院で見せるのが嫌だ」と受診を先送りした結果、発見が遅れてステージが進行してしまったという事例は医療現場で現実に起きている。まず皮膚科で悪性所見がないことを確定診断させた上で、良性のほくろとして運気のシンボルに位置づけるのが、現代を生きる理知的なアプローチだ。
また、「足の裏のほくろは刺激を受けるとすべてがんに変化するから、予防的に全部切除しなければならない」というのも過去の古い誤解だ。かつては摩擦による悪性化説が過大に叫ばれた時代もあったが、現代の皮膚病理学においては、良性のほくろが外部刺激によって後天的にメラノーマへ変異する確率は極めて低いことが判明している。メラノーマは最初から悪性細胞として発生することが主流であり、ダーモスコピーで完全に良性と判定されたほくろを無理に切除する必要はない。
さらに、保護者を悩ませるのが「子供の足の裏にある生まれつきのほくろ」だ。小児期(特に乳幼児期〜学童期)に足の裏にほくろが見つかるとパニックになる親は多いが、小児期におけるメラノーマの発症率は極めて稀(年間100万人あたり1人未満)である。子供の足の裏のほくろは、身体の成長とともに縦横比を保ちながら拡大していくのが自然な生理現象だ。小児皮膚科においても、過度に恐怖して幼少期に局所麻酔手術を強いるのではなく、定期的な写真撮影によるサイズ計測と年1回の専門医チェックで経過観察する方針が標準的となっている。