なぜ古来より人々は、特定の神仏に病気平癒・祈願を託してきたのだろうか。日本の神道において医薬の神として崇められるのが少彦名命である。小柄な身体でありながら国造りを助け、人々に病の治療法や温泉の効能を教えたとされる伝承から、全国の薬祖神社や癌封じの社で主祭神として祀られている。
一方、仏教の現場で病魔撃退の象徴として絶大な信仰を集めるのが薬師如来だ。左手に薬壺を持ち、あらゆる病苦から人々を救う誓いを立てたこの如来像の前には、古今東西の病める人々が集ってきた。神道の少彦名命と仏教の薬師如来。神仏習合の歴史を経て築かれたこれらの信仰体系は、不安に苛まれる人間の精神を支える強固な基盤として今なお生き続けている。