猫の事務所を支える個性豊かな面々には、映画本編では語り尽くせなかった緻密なバックストーリーが存在します。
事務所の主であるフンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵(通称:バロン)は、職人の魂が込められたことで命を宿した工芸品の人形です。彼にはかつて「ルイーゼ」という対になる貴婦人猫の人形が存在し、戦争や時代の波によって引き裂かれたという切ない過去を背負っています。バロンの洗練された立ち振る舞いや慈悲深さは、自らを創り出してくれた人間への敬意と、永遠の想い人への誓いから生まれています。
普段はぶっきらぼうながら頼れる相棒のムタ(本名:ルナルド・ムーン)は、かつて猫の国にある湖の魚をすべて食べ尽くして逃亡した伝説の大罪人という破天荒な過去を持っています。普段は世捨て人のように振る舞いながらもバロンの元に身を寄せるのは、互いの孤高の生き方に共鳴しているからに他なりません。
事務所の屋根や広場に立つガーゴイルのトトは、普段はただの石像のカラスですが、バロンの呼びかけに応じて魔法のように動き出します。この3者が織りなす絶妙な距離感と信頼関係は、長年のファンを惹きつけてやまない魅力の一つです。