「この浮き出た血管は放置して大丈夫なのか」という疑問を抱く方は大勢います。結論から言えば、手の甲に見られる血管拡張の大部分は「ハンドベイン(Hand Vein)」と呼ばれる生理的な変化であり、健康を直接害する悪性腫瘍や直ちに命に関わる病気ではありません。しかし、外見上の変化が著しい場合や、稀に存在する病理的疾患との鑑別は極めて重要です。
下肢に生じる下肢静脈瘤は広く知られていますが、同様の病態が手元に現れる状態を臨床現場では手背静脈瘤や手背静脈拡張症と呼びます。手背静脈瘤の症状と経緯を追うと、初期は夕方や気温の高い時間帯に血管が少し太くなる程度ですが、年数を経るにつれて血管の蛇行が固定化し、手を心臓より高く上げても血管の膨らみが引きにくくなる傾向が見られます。基本的には良性ですが、人によっては「手元が重だるい」「締め付けられるような違和感がある」といった鈍い不快感を訴えるケースもあります。
一方で、明確に手の血管が目立つ病気として警戒すべき兆候も存在します。以下のような特異な症状が認められる場合は、美容的な悩みとして放置せず、速やかに血管外科や循環器内科を受診しなければなりません。
- 片側の手・腕だけが急激に腫れ上がり、血管が怒張している:深部静脈血栓症や鎖骨下静脈の狭窄・閉塞が疑われます。
- 腕を上げた際にしびれや冷え、手の色の変化を伴う:神経や血管が圧迫される胸郭出口症候群の可能性があります。
- 血管の走行に沿って強い自発痛や発赤、熱感がある:血栓性静脈炎や局所的な感染症の発症が考えられます。
- 寒冷刺激で指先が白や紫色に変色する:自己免疫疾患に関連するレイノー現象の疑いがあります。