他人の過ちを執拗に叩く社会に対し、なぜ多くの人が「もう見たくない」と感じるのか。そこには個人の精神衛生を守るための健全な心理的防衛メカニズムが働いています。
社会心理学において、他者の転落や不幸を喜ぶ心理は「シャーデンフロイデ」と呼ばれます。スキャンダル初期にはこの心理が刺激されるものの、過剰なバッシングが長期化すると、今度は「共感疲労(コンパッション・ファティーグ)」が読者を襲います。見せしめのようなネット私刑や容赦ない誹謗中傷に日常的に晒されることで、受け手側の脳と心は激しいストレスを感じ、結果として「他人の私生活など一切興味がない」と感情をシャットアウトするのです。
さらに、物価高や将来不安といった現実の生活課題を抱える一般生活者からすれば、「不倫したタレントが謹慎しようが復帰しようが、自分の給料や生活水準には1ミリも影響しない」という冷めたリアリズムが働きます。架空の正義感を振りかざすワイドショーのコメンテーターと、生活に追われる自身の現実とのギャップがあまりに大きすぎるため、スキャンダル報道そのものが無意味な茶番劇として映るようになっています。