打ち込み主体のボカロ曲を、生バンド編成のライブで違和感なく再現することは、ボーカリストにとっても演奏陣にとっても極めてハードルの高い作業です。『ハッピーシンセサイザ』は特に、リズムの揺らぎが許されない四つ打ちビートと、間断なく続く細かい譜割りが特徴です。
伊東歌詞太郎氏は、声帯ポリープの手術という歌手生命の危機を乗り越えた経験を持ちます。復帰後のステージでは、より喉に負担をかけない効率的な発声法を確立し、息継ぎのタイミングがシビアな本曲においても、息切れを感じさせないロングトーンと安定したピッチを披露しています。
ネット上の「ボカロ曲は機械が歌うから良い」「人間が歌うと重くなる」という固定観念を、彼はライブの現場で覆し続けてきました。機械の正確さに人間のダイナミクスを上乗せすることで、楽曲のポテンシャルを何倍にも引き出すアプローチは、後進の歌い手たちにも多大な影響を与えています。