手作りソフトクッキーにおいて最も頻発するトラブルが、「しっとり」を目指すあまり加熱が不十分になり、中心部がネチャネチャとした「生焼け」に陥る失敗です。生焼けの生地は食感が悪いだけでなく、十分に糊化(α化)していない小麦粉のベータデンプンを摂取することになり、消化不良や腹痛を引き起こすリスクを孕んでいます。
製菓衛生学の観点において、小麦粉中のデンプンが安全かつ美味しく消化できる状態になるには、中心温度が最低でも65〜75℃に達していることが絶対条件です。生焼けと理想的な「チューイー(適度な弾力と粘りがある状態)」を分ける境界線は、オーブンの焼成プロファイルに存在します。
アメリカンソフトクッキーの基本は、170℃〜185℃の比較的高温で10〜12分程度という短時間焼成です。低温でダラダラと長時間焼くと水分が抜けきって乾パンのようになり、逆に極端な高温短時間では外側だけが焦げて中心が生焼けになります。焼き上がりの見極めは「クッキーの縁(エッジ)が薄いキツネ色に色づき、中央を指の腹で軽く押したときにわずかに沈んでゆっくり押し返してくる弾力」がある瞬間です。取り出した直後は柔らかすぎると感じても、天板の上で5分間放置する「キャリーオーバー・クッキング(予熱調理)」によって、内部のデンプンが完全に安定します。