料理の現場において、白菜を扱う際の基本とされるのが白菜の葉と芯を分ける理由の理解です。白菜の「葉(葉身部)」と「芯(葉柄部)」では、組織構造も水分保持力も全く異なります。薄い葉先は熱が通りやすく、沸騰した煮汁の中で2〜3分も加熱すれば細胞壁が破壊されて急速に軟化します。一方で、水分と食物繊維が密集している白い芯の部分は、火が通るまでに8〜10分以上の時間を要します。これらを同時に同じサイズで鍋へ投入すると、芯に火が通る頃には葉先が過加熱でドロドロに溶け出し、白菜特有の旨味成分(グルタミン酸)やビタミンCが煮汁へ過剰に流出して全体のスープが薄まってしまいます。
フードメディア「macaroni」が配信した野菜ソムリエ監修の解説資料や調理科学の現場検証データによると、白菜の細胞壁はペクチン質で強固に結合しており、芯の組織は縦方向に太い維管束が走っています。この強固な組織に対して包丁を垂直に寝かせて切る「そぎ切り」を施すと、維管束の導管が斜めに切断されて露出面積が大幅に拡大します。その結果、浸透圧の作用によって短時間で味が染みる切り方が完成し、出汁の吸収効率が通常の四角いざく切りと比較して約1.8倍に向上することが確認されています。葉と芯を物理的に切り離し、熱の通り方を計算して鍋に投入することこそが、プロが実践する味染みの絶対条件です。