三谷幸喜がこれまでに執筆した大河ドラマ3作品は、いずれも歴史上の動乱期を舞台にしながら、アプローチと劇構造が大きく異なっています。三谷脚本は大河ドラマの伝統である「重厚な歴史絵巻」という枠組みを尊重しつつ、演劇的な会話劇のダイナミズムを融合させることで、毎回新たなスタンダードを確立してきました。
2004年の『新選組!』は、当時としては異例の若手キャスト中心の布陣で挑み、当初は「軽すぎる」というオールドファンからの反発を受けました。しかし、第33回「友の死」(山南敬助の切腹)を契機に評価は一変。青春の終わりと組織の残酷さを描ききり、放送終了後には異例となる続編スペシャル『新選組!! 土方歳三 最期の一日』が制作されるほどのカルト的人気を博しました。
12年後の2016年に発表された『真田丸』は、信濃の小領主がいかにして乱世を生き抜いたかを描く「家族のサバイバル劇」として構築されました。父・昌幸役の草刈正雄が見せた圧倒的な存在感や、SNS上でファンが自発的にイラストを投稿する「#丸絵」現象など、デジタル時代のテレビ視聴スタイルを先駆的に確立した作品です。
そして2026年の『鎌倉殿の13人』では、主人公・北条義時が純朴な青年から冷酷無比な権力者へと闇落ちしていくプロセスを容赦なく描写。序盤の明るいホームドラマ調が後半の凄惨な粛清劇への強烈な落差として機能し、「毎週日曜が怖いのに観ずにはいられない」という社会的狂騒を生み出しました。