土木工学の視点から擁壁を分類すると、土圧を支えるメカニズムによってその構造と耐用年数は全く異なる。現代の宅地造成で標準となっているのが鉄筋コンクリート構造(RC造)の擁壁だ。L型や逆T型などの形状があり、底版の上に載る土の重量とコンクリートの曲げ強度を巧みに利用して土圧に抵抗する。設計計算が明確で耐震性も高いが、施工精度と適切な水抜き穴の配置が寿命を左右する。
一方で、高度経済成長期に多用されたのが自重だけで土砂を支える重力式擁壁や、石やコンクリートブロックを積み上げた間知石擁壁(けんちいしようへき)だ。これらの伝統的な土留工は、現場の職人技に頼った「練積(ねりづみ)」や「空積(からづみ)」が多く、経年劣化によって内部の土砂が流出し、空洞化が進んでいるリスクが極めて高い。表面上は頑丈に見えても、内側から崩壊へのカウントダウンが始まっている事例は少なくない。