整備の急加速を実現させた最大の立役者は、現場の物理的な制約を打ち破った新技術の数々だ。従来の頑丈な可動式ホーム柵は、1開口部あたり数百キロから1トン近い重量があり、築数十年の古い駅ホームでは床面を大規模に補強しなければ設置できなかった。工事期間の長期化と数億円規模にのぼる補強費用が、導入の大きな足かせとなっていたのである。
この難局を打破したのが、構造を極限までシンプルにしたスマートホームドアだ。フレームをパイプ構造にし、開閉機構をコンパクト化することで大幅な軽量化に成功。ホーム下の補強工事を最小限に抑え、工期を劇的に短縮させた。
さらに、車両ごとにドアの数や位置が異なる相互直通運転区間では、昇降式ホーム柵が威力を発揮している。複数本のワイヤーやバーが上下に昇降するこのタイプは、ドア位置のずれに柔軟に対応できる開口幅の広さを持ち、左右に開閉するスペースがない狭小ホームでも無理なく稼働する。現場の条件に合わせて最適なシステムを選択できるようになったことが、導入ペースを決定づけた。