かつて組織の暗部に隠されていた性犯罪を社会問題へと押し上げたのは、徹底した調査報道の力に他ならない。かつてハリウッドの絶対的権力者であったハーヴェイ・ワインスタインによる長年の性加害と組織的な口止め工作を暴き、世界的な地殻変動を起こしたニューヨーク・タイムズ紙の追及は、映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』として結実し、報道が持つ変革の威力を世界に知らしめた。
この潮流は、カトリック教会の組織的隠蔽を暴いたボストン・グローブ紙の軌跡を描く映画『SPOTLIGHT(スポットライト 世紀のスクープ)』が示したジャーナリズムの原点とも深く共鳴している。日本国内においても、『文藝春秋』をはじめとする週刊誌や独立系ジャーナリストによる執拗な追及が、大手メディアが忖度によって報じてこなかった大企業や芸能界、政界の性被害スキャンダルを次々と白日の下に晒してきた。記者が被害者の痛みに寄り添い、物的証拠と証言を積み重ねる調査報道こそが、巨大組織が築き上げた鉄壁の沈黙を突き崩す唯一の楔となっている。