多くのグラフィックデザイナーや組版職人が「BA-90」と聞いて真っ先に思い浮かべる正体、それは昭和の製品パッケージや工業規格書類に必ず印刷されていた「旧JISマーク(〄)」です。
当時の印刷現場において、日本工業規格(現・日本産業規格)に合格した製品であることを示すJISマークの印字は必須業務でした。写研の写真植字機では、こうした公的マークや各種認証シンボルがあらかじめ「記号盤」と呼ばれる専用のガラス板にまとめられており、その「BA記号盤の90番コード」に配置されていたのがこのシンボルマークでした。
文字コード規格が統一されていなかった時代、デザイナーは原稿の余白に赤字で「BA-90」と指定するだけで、写植オペレーターが迷わず目的のマークを印画紙へと焼き付けてくれたのです。製品の品質を保証する象徴であり、当時のインダストリアルデザインや出版印刷には絶対に欠かせない重要記号でした。