チェルシーが愛用していた帝具は、化粧箱の外見を持つ「変身自在 ガイアファンデーション」でした。対象が人間であろうと動物であろうと、サイズや声を問わず完全に擬態できるという、情報収集や潜入工作において帝国全土でも右に出る者がいない傑作帝具です。
しかし、この帝具には明確な構造的欠陥がありました。それは「着用者本人の身体能力や戦闘力そのものは一切強化されない」という点です。アカメの「一斬必殺 村雨」やエスデスの「魔神顕現 デモンズエキス」のような直接的な破壊力を持たないため、暗殺を完遂するためには、目標が無防備な状態のときに急所へ針を刺し込むピンポイントの技量に依存していました。
過去に所属していた地方の暗殺部隊で仲間を全員失い、ただ一人生き残ったチェルシーは、徹底したステルス戦術によって数々の修羅場を乗り越えてきました。しかし、イェーガーズという帝国の至宝が集う部隊を相手取るにあたり、「一撃で死なない規格外の生体怪物」が存在するというリスク想定がわずかに後手に回ってしまったことが、彼女の絶対的な死角となったのです。