「きらいがある」を取り巻く最も深刻な誤解は、「ポジティブな長所を控えめに表現する言葉」としての誤用です。ネット上の一部Q&Aサイトなどでは、「長所を謙遜して伝える際に使えるか」という質問に対し、誤った回答が散見されます。
たとえば、就職活動の面接や自己PRで次のように話してしまう就活生が実在します。
❌ 誤用例:「私は何事にも責任感を持って最後までやり抜くきらいがあります」
これは明らかな文法・語法の誤用です。「最後までやり抜く」という美点を述べる文脈に「きらいがある」を接続すると、面接官には「頑固すぎて融通が利かず、周囲に迷惑をかけている自覚があるのか?」と奇異に映ります。もし責任感を自虐的・反省的に述べるのであれば、「責任感が強すぎるあまり、仕事を一人で抱え込むきらいがあります」のように、生じる弊害まで具体化しなければ文章として成立しません。
もうひとつの盲点は、「目上の人に対する直接の敬語化は不可能」という事実です。「きらいがおありです」「きらいでいらっしゃいます」といった敬語表現を編み出して上司に使おうとする人がいますが、日本語の構造上、これらはすべて誤用であり、極めて失礼な物言いになります。「好ましくない欠点・癖」を意味する名詞に尊敬の接頭辞を付けたところで、相手を批判・論評している構図そのものは消えないためです。