「歩くときに何となく体が揺れている気がするが、痛みがないから放置していた」――リハビリ現場を訪れる患者の多くが、このような初期経過を口にします。日々の臨床観察によると、トレンデレンブルグ歩行の初期段階では、患者自身は異常を感じにくく、家族や友人から「歩き方がぎこちない」「ペンギンのように左右に揺れている」と指摘されて初めて外来を受診する例が後を絶ちません。
片足立ち検査を試みてもらうと、健常側では難なく20秒以上キープできるのに対し、患側を軸足にした途端、数秒と経たずに反対側の骨盤が急激に下がり、バランスを崩して足をついてしまう光景が日常的に確認されます。本人は真っ直ぐ立っているつもりでも、スマートフォンの動画で自身の後姿を確認させると、「ここまで骨盤が落ちて体が歪んでいたのか」と絶句するケースが極めて典型的です。
歩行時の代償作用は、股関節にとどまらず全身へと波及します。骨盤の傾斜を埋め合わせるために腰椎の過度な側屈と回旋が繰り返され、やがて頑固な筋膜性腰痛や変形性腰椎症を誘発します。さらに、支持側の膝関節には外反・内反ストレスが過剰にかかり、変形性膝関節症の進行を加速させるという悪循環に陥る現場データが蓄積されています。