他学部を卒業した社会人や文系出身者が一念発起して医師を目指すケースも後を絶ちません。しかし、医学部再受験難易度は大学受験市場において依然として最難関のハードルとして立ちはだかっています。
かつて問題視された不正入試問題以降、文部科学省の指導によって年齢や性別による不当な減点は是正傾向にあります。しかし、共通テストで9割前後の得点率が要求される学力的な壁はもちろんのこと、面接試験では「なぜ今さら医師なのか」「年齢的に一人前になるまで医療界にどれだけ貢献できるのか」という極めてシビアな適性評価が行われます。仮に25歳で医学部に再入学した場合、卒業時に31歳、初期研修修了で33歳、専門医取得時には36歳を迎えます。医学部在学中の6年間は無収入になるため、生活費を含めた数千万円規模の資金計画がなければ学業の継続そのものが破綻しかねません。
現場の若手医師たちが手記や医療系フォーラムで吐露する生の告白にも、数字には表れない過酷さが滲み出ています。
「医学部に入ればゴールだと思っていたが、それは壮大な勘違いだった。大学在学中は膨大な暗記と容赦ない留年宣告に怯え、病院実習では医師や看護師の顔色を窺う日々。医師国家試験に合格しても、初期研修医の2年間は当直明けで頭が回らないなか、重篤な患者の急変対応に追われて押し潰されそうになる。26歳で現場に出て、30歳を過ぎてようやく少し視界が開けてきた感覚だ」(都内総合病院・内科専攻医の証言)
このように、初期研修を終えて法的に診療ができる立場になっても、医療過誤への恐怖や責任の重圧、自己研鑽に費やす膨大な時間という「見えない代償」を払い続けることで、医師たちは一人前の階段を登っていきます。