牛を語る上で欠かせないのが、4つに分かれた巨大な胃袋の存在です。牛は人間が消化できない硬い草の主成分「セルロース」をエネルギーに変えるため、極めて合理的な消化器官を進化させてきました。
それぞれの胃には明確な役割分担が存在します。
- 第1胃(ルーメン/焼肉名:ミノ):胃全体の約80%を占める最大の部屋。内部に無数の微生物や原生動物が共生しており、草を発酵させて分解します。
- 第2胃(レティキュラム/焼肉名:ハチノス):内壁が蜂の巣状になっており、口へ内容物を押し戻すポンプの役割を果たします。
- 第3胃(オマスム/焼肉名:センマイ):ひだ状の組織が重なり、細かくなった食物から水分やミネラルを絞り取って吸収します。
- 第4胃(アボマスム/焼肉名:ギアラ):人間と同じように強い酸性の胃液を分泌し、微生物そのものやタンパク質を本格的に消化する「本来の胃」です。
牛が一度飲み込んだ草を再び口に戻して噛み直す行為を「反芻(はんすう)」と呼びます。草食動物である牛は、かつて肉食獣の脅威にさらされていました。そのため、危険な草原ではまず急いで胃袋に草を詰め込み、安全な茂みに戻ってからのんびり噛み砕くという生存戦略をとった名残が、この反芻という習性です。