この現象の先駆的研究で知られるのが、英国のエセックス大学で脳科学を研究するアーノルド・ウィルキンズ名誉教授だ。同教授らの研究チームは、トライポフォビアを引き起こす視覚情報が、ヒョウモンダコやドクフキヤガエルといった有毒生物の身体模様、そして天然痘や水痘などの感染性皮膚疾患の空間周波数成分と極めて高い類似性を持つことを突き止めた。
臨床心理学の観点からも、この反応は過剰な自己防衛メカニズムとして説明される。視覚皮質が高コントラストの集合パターンを検知すると、即座に自律神経へ警戒信号が送られる。脈拍が跳ね上がり、肌に痒みを感じるのも、体が「皮膚上の病原体」を排除しようと錯覚するためだ。人間が生き延びるために手に入れた視覚フィルターが、時に暴走してしまうのがこの恐怖症の本質と言える。