そもそもこの物語の源流は、鎌倉時代初期の説話集『宇治拾遺物語』の冒頭を飾る「鬼にこぶとられる事」にまで遡る。800年以上の時を超えて語り継がれてきた構造には、人間の根源的な心理メカニズムが組み込まれている。
古典文学の研究者らは、作中に登場する「鬼」の象徴性に着目する。当時の鬼は単なる悪者ではなく、常識や社会的規範の外側にある「異界の力」そのものだった。自分のコンプレックスであった頬の瘤を、策略でもなく、純粋な歓喜の踊りによって「価値ある質草(担保)」として取り去られるプロセスは、無欲な表現者に対する天からの祝福とも読める。