一方で、相手役である有馬隼人のキャラクター造形も秀逸だ。ただの冷たいツンデレではなく、優しさの中にどこか影があり、掴みどころがない。つかさの気持ちを知りながらも、彼なりの葛藤や過去のトラウマから、素直に踏み込めない絶妙な距離感を保ち続ける。
この「思わせぶりだけど踏み込んでこない」有馬の態度に、読者はつかさと一緒になって一喜一憂させられた。冷たく突き放されたかと思えば、ふとした瞬間に見せる圧倒的な優しさ。そのギャップこそが、多くのファンを「有馬沼」に引きずり込んだ元凶であり、本作の推進力となっていたことは間違いない。