最近になって、当時の関係者が保管していたとされる音声テープの存在が噂されている。そこには、深夜の楽屋裏で、疲れ果てた島倉が細木に対して吐露した本音や、細木が島倉に向けて放った、冷酷ながらもどこか愛情を感じさせる叱咤激励の声が記録されているという。
「あなたには歌しかないのよ」。そう言い放つ細木の言葉は、島倉を縛り付ける呪縛であると同時に、彼女を歌手として生かし続けるための唯一の処方箋だったのかもしれない。テープの断片から浮かび上がるのは、メディアが作り上げた「悪女」と「悲劇のヒロイン」というステレオタイプを覆す、生々しい人間の葛藤だ。