「あんなに好きだったのに、なぜ?」——その疑問に対する答えは、脳内の化学変化に隠されている。交際初期の強烈な興奮や多幸感を高めていたのは、脳内で大量に分泌されるドーパミンだ。相手の着信通知ひとつで胸が跳ね踊るような感覚は、この神経伝達物質の作用によるものにほかならない。
しかし、人間が常にドーパミン過多の状態を維持することは構造上不可能だ。脳の過剰な興奮を防ぐため、受容体は次第に慣れを生じさせ、分泌量は通常の状態へと戻っていく。研究によれば、この移行期はおよそ18ヶ月から36ヶ月の間に訪れるという。つまり、パートナーへの執着やときめきが薄れるのは冷酷な裏切りではなく、脳が正常な平衡状態を取り戻した結果なのだ。この「化学物質の宴の終わり」を愛の終わりと勘違いしてしまうことこそが、倦怠期の最大の罠と言える。