菅直人氏の政治的評価が鋭く対立する最大の理由は、「官僚機構や大企業と対峙する強烈な突破力」が、平時には国民の熱狂を生む一方、非常時には「独善的な組織破壊」として機能したという二面性にあります。
世論調査や歴代政権の検証データを見ても、菅政権に対する好意的な層は「東電の福島第一原発全面撤退を食い止めた執念」や「FIT法(固定価格買い取り制度)を成立させた実行力」を高く評価します。反対に批判層は、2010年参院選直前の唐突な消費税増税発言による敗北、尖閣諸島中国漁船衝突事件での場当たり的な初動、そして原発事故時の現場への過度な介入を「国益を損ねた失政」として糾弾します。
政治学的な見地から言えば、菅氏は典型的な「アクティビスト(活動家)型リーダー」でした。綿密な根回しや組織のヒエラルキーを介さず、自らの直感と信条で急所を突く手法は、既存の権力構造を打破する際には絶大な効果を発揮します。しかし、何十万人もの官僚機構や自衛隊、巨大インフラ企業を統率する国家最高権力者の座においては、トップダウンの暴走と受け取られ、深刻な不信の溝を生み出す結果となりました。