映画『ベニスに死す』の公開後、世界中から注がれる過剰な視線と大人たちの欲望に晒され、心身ともに深い傷を負ったビョルン・アンドレセン。日本をはじめとする各国での熱狂的なブームから逃れるように音楽活動へ傾倒していた彼が、人生の安らぎを求めて結ばれた相手が、スウェーデンで詩人や作家として活動していたスザンナ・ローマン(Suzanna Roman)でした。
ふたりは1980年代初頭に出会い、深い精神的な結びつきを通じて愛を育み、1983年に正式に結婚を発表しました。当時のビョルンは「世界一の美少年」という呪縛のようなレッテルから脱却しようと必死にもがいており、表現者として知性を備えたスザンナの存在は、傷ついた彼の精神にとって唯一無二のシェルターとなっていたと伝えられています。
結婚生活の初期、ふたりは互いの創作活動を支え合いながら、静かで穏やかな日常を取り戻そうと努めていました。美貌の偶像として消費され尽くした過去を忘れ、一人の生身の人間として生き直すための拠点こそが、妻スザンナと築いた家庭でした。