前作『範馬刃牙』において、ピクルは並み居る強豪たちを次々と薙ぎ払い、圧倒的な絶望感をもたらした。地上最強の生物・範馬勇次郎との力比べですら互角以上に渡り合ったモンスターが、なぜ武蔵の前では「逃走」という選択を選んだのか。
その理由は、ピクルの行動原理がプライドではなく生存本能に直結している点にある。危険な生物との遭遇において、無駄な死を避けるために逃げることは野生の絶対正義だ。真剣で一切の躊躇なく肉体を切り刻んでくる武蔵の中に、ピクルはもはや食料としての価値ではなく、絶対的な死の影を見た。自ら背を向けて走り去った行動こそ、武蔵という存在の異物感を何よりも雄弁に物語っている。