だが、この美しき水鏡の裏には、胸を締め付ける伝承が隠されている。奈良時代、帝の寵愛が薄れたことを嘆き、自らこの池に身を投じたという帝の侍女、すなわち「采女」の悲恋物語だ。
入水した采女の霊を慰めるため、池のほとりには後ろ向きに建つ「采女神社」が祀られた。身を投げた池を見るのがにしのびないからと、一晩で社殿が背を向けたという奇妙な言い伝えも残る。
毎年中秋の名月の日になると、現地では盛大な采女祭りが執り行われる。花扇を載せた管絃船が水上を練り歩く幻想的な光景は、千年の時を超えて人々の涙と祈りを今に伝えている。