映像の美しさに目を奪われ、安易に同居に踏み切った現場では、取り返しのつかない悲劇が後を絶ちません。エキゾチックアニマル診療に携わる獣医師への取材では、背筋が凍るようなフクロウと猫の同居トラブル事例が次々と証言されています。
最大の見えない脅威、それがパスツレラ菌(Pasteurella multocida)です。猫の口腔内にはほぼ100%、爪にも約60〜70%の確率でこの細菌が常在しています。猫にとっては無害な常在菌ですが、鳥類にとっては血液中に入ると急激に増殖して敗血症を引き起こす極めて致死率の高い猛毒菌となります。
「猫がじゃれついて軽く前足で叩いただけ」「羽毛を甘噛みしただけ」という飼い主の認識であっても、皮膚に目に見えないほどの微細なピンホール状の傷ができればそこから菌が侵入します。感染した鳥類は、早ければ半日、長くとも48時間以内に高熱と多臓器不全を発症し、抗生剤投与が間に合わなければほぼ確実に死に至ります。都内の動物病院には、「朝起きたらフクロウが止まり木から落ちて冷たくなっていた。原因を調べたら前夜に猫と遊んだ際の小さな傷からのパスツレラ感染だった」という悔恨の涙を流す飼い主が後を絶ちません。
もう一つのリスクは、猫の「プレイドライブ(捕食・追跡本能)」の突発的な発動です。普段はおとなしくフクロウを無視していた猫が、フクロウが羽ばたいた瞬間、その不規則な音と動きに本能を刺激され、目にも留まらぬ速さで飛びかかって翼の骨を複雑骨折させる事故が多発しています。逆に、中・大型フクロウが猫の急な接近にパニックを起こし、自衛のために突き出した鋭利な爪が猫の眼球を直撃し、角膜破裂で失明に至った凄惨なケースも報告されています。
さらに見逃せないのがフクロウと猫の同居リスクにおける精神的負荷です。猛禽類は環境の変化や視覚的ストレスに極めて敏感な生き物です。部屋の中をプレデターである猫が自由に徘徊しているという状況そのものが、フクロウにとって終わりのない恐怖体験となります。結果として、過度のストレスから自らの羽をむしり取る自毛引き症や、頑固な拒食症に陥り、衰弱死するケースも珍しくありません。