首都圏や近畿圏の過密地帯を離れ、防災を主眼に地方都市へ居を移した人々は、どのような日常を送っているのでしょうか。移住者コミュニティや現地アンケートから浮き彫りになった生々しい現実を分析します。
2026年に東京都世田谷区から岡山県総社市の高台へ移り住んだ40代のITエンジニア男性は、その心理的変容を次のように語っています。
「東京にいた頃は、震度3の地震が起きるたびに『ついに首都直下か』と心拍数が跳ね上がり、家族の安否確認や備蓄の消費期限に追われていました。岡山に来て驚いたのは、周囲の住民が地震に対して極めてリラックスしている点です。年に一度揺れを感じるかどうかという生活環境は、精神的な健康面で計り知れないプラスになりました」
一方で、手放しの賛美ばかりではありません。大阪府から香川県高松市郊外へ移住した30代の主婦は、インフラと生活文化のギャップに戸惑いを隠せません。
「地震が少ないのは事実ですが、車社会の維持費が重くのしかかります。駅近の物件を選んだつもりでも、家族一人に一台車がないと日用品の買い出しすら困難です。さらに、地元の自治会や消防団活動への参加要請が強く、都市部のマンション暮らしのような『防災をお金で解決する感覚』では地域コミュニティに馴染めません」
現場の声から見えてくるのは、「災害への不安が消え去る解放感」と引き換えに、「自立的な移動インフラの確保」や「濃密な地域社会との協調」が求められるという等価交換の実態です。